八月に入って二週連続で、台風に週末を襲われた。
主には南西諸島と四国や中国地方…のみならず、
何でか東北や北海道でも、前線が刺激されたか大雨となったそうで。
少なからぬ被害も出たのだから
紛うことなく大変なことではあったのだが、
「そっちのニュースが優先されたのは判るけど、
テレビの画面がテロップだらけンなったのはちょっとなぁ。」
A4ノートサイズのタブレットをお膝に、
そんな言いようをしてすべらかな頬を膨らませるのは、
賊学大フリル・ド・リザードが知能戦力としてひそかに誇る、
小さな軍曹こと、蛭魔さんチの妖一くんで。
情報収集にはネットを自在に跳梁しているようなイメージがある
金髪の子悪魔坊やさんだが、
これが案外と、
一番優先しているニュースソースは
普通一般の地上波放送のニュース番組だったりするそうで。
「ネットの上の情報は、
速くはあるけど どこまで公正か判らない時が多いからな。」
なので、特殊な、若しくは特定の情報がほしいという場合を除き、
世間の情勢というのに関してはを普通放送のテレビのニュースで
見聞きしているのだそうな。
今は今で、合宿所へ移動する高速道路の渋滞予想を検索中だが、
「行楽客の車が微妙に はみ出して来そうだってよ。」
宿舎として使うのは、やや高原にある葉柱さんチの別邸なので、
帰省客の車列には縁がないかと思いきや。
「ああ、それな。
沿線に何とかパークだか道の駅だか出来たらしくてな。」
そういったお楽しみなぞ何にもなくて、
そこに住まう関係者以外は立ち寄らない土地。
このまま寂れるのもなぁと、
一念発起して建てたものが大当たりしたというところならしく。
栄えるのが悪くはないが、
人が寄らなくて至便だとしていた立場としては 痛し痒しというところ。
「何にも作らんでも、楽しみたい奴は楽しめるだろうによ。」
何でこうも日本人は、ゴルフ場とか水族館とか
アウトレットパークとか道の駅とか狭い国土にボコボコ作りたがるかなと、
「厚生年金の無駄遣いしまくって建てた
グリーン何とかを反省しろっつぅの。」
恐らくも何も、昭和の時代の“箱もの信仰”の弊害のお話なのだが、
ひ孫世代だろう21世紀の小学生に言われていては世話はなく。
“まったくだ。”
マイクロバスの点検をしたり
搬送用のボックスカーへ荷物を積み込んだりと、
出発の支度にバタバタしつつも、
坊やの一丁前な言いようへ苦笑するお兄さんたちだが、
「高校野球の応援ですかって訊かれたぞ。」
とは、マイクロバスを借りて来た銀さんのお言葉で。
そういや、夏といえばの風物詩も元気に開催中だった。
高校総体も先日無事に幕を閉じたが、
今度はユース世代の五輪ぽいのも始まるとかで、
「この暑いのに元気だねぇ、若いのは。」
アメフトの全国大会は、高校もそれ以上も秋冬が本番とあって、
真夏の祭典には縁がなかった顔触れだけに、
さして年の差はないはずが、そんな枯れた言いようが出る始末だったが、
「夏休みだからってのもあるのかねぇ。」
「けど、そろそろ そういう名目は
外したほうがいいんじゃねぇか?」
年々、夏場の蒸し暑さが増している日本だけに、
そのうちお元気な生徒や学生たちだって
ばたばた倒れるほどの苛酷な気候にもなりかねぬ。
「東京五輪だって、
一番暑いさなかだからって、対策が要るぞと大騒ぎらしいしよ。」
「大体、国によって暑さ寒さの時期も違おうに
何でまた期間がこうって固定されてんだ?」
「何でも、
大きな国の有名なリーグなんかと重ならないようにらしいぞ。」
さすがはスポーツフリークも多いか、
そこいらの事情に明るい顔触れが
そんな話題を取り沙汰し始めたが、
「俺としちゃあ、
高校総体にアメフトがないのが気に食わねぇ。」
野球だってあの炎天下で毎日って日程でやってんのによと、
愛らしい口元を尖らせる妖一くんで。
でもねぇ…、
「あのな、妖一。」
「タッチフット程度ならともかく、
この装備で炎天下の試合は無理だぞ。」
「全天候型ドームスタジアムを 3つくらい借りないと。」
ですよねぇ。
ルール上では時間の決まったスポーツなれど、
攻守の交替などなど いちいちプレイを止める関係で、
実質は2時間くらい掛かる代物。
しかもサポーター含めて、何だかんだとぎっちり着込むので、
動き出す前からサウナ状態になりかねぬ。
「そんな予算を切れるはずなかろうし、
参加する学校もあるとは思えんな。」
「そうそう。
二学期に入れば本チャンの大会がすぐにも始まるのによ。」
お兄さんたちのもっともらしい反論へ、
「そんな言ってるから これ以上の人口が増えねぇんだよ。」
知名度を上げないから、
いまだにラグビーと一緒くただったり、
大学生しかやってないと思われてたりすんだよと。
愛らしい口元をますますと尖らせた小さな軍曹殿、
「俺みたいな幼子が、
その筋へたどたどしい文体を研究して
それらしい嘆願書を送って頑張ってるってのによ。」
「……。」
「色々とツッコミどころだらけなんだがな、それ。」
むんと胸を張った坊やだったのへ、
居合わせた大学生のお兄さんたちが
一瞬沈黙してから“おいおいおい”と、
微妙なお顔になったのは言うまでもなかったのであった。
いやあ、まだまだ暑い夏です、はい。
〜Fine〜 14.08.13.
*帰省ラッシュがどうとかこうとか、
ニュースで扱う頃合いに入りましたね。
台風の大暴れという横槍のせいで、
今年の盆休みは
思わぬ格好で短く苛酷になった人も多いんだろうなぁ。
*…で、坊やの嘆願書ですが、
どう頑張っても子供の文章じゃあないとされ、
その筋では“怪文書”扱いされてたりして?(こらこら)
装備の軽量化や清涼化を開発した方が速いかも知れんぞと、
そっちへ特化したら 凄いもんが出来そうですよね。
工事現場で採用されてる
ファンがついてる作業着とか応用したりして。
「タックルかまされた拍子に壊れかねんがな。」
「そっか、耐久性が要るな。」
おいおい、どこへ向かう気だい。
めーるふぉーむvv 
or *

|